2020年4月27日月曜日

ZoomでiPhoneをカメラとして表示するレッスン。

ZoomでiPhoneをカメラとして表示するレッスン。

どうやるか?
Zoomの「画面の共有」の中の「iPhone/iPad」を選択します。AirPlayの方です。ホワイトボードのすぐとなり。
iMacとiPhoneが同じWi-Fiに接続されているか確認して下さい。
自宅や大学でもたいていは同じWi-Fiにつないでいるはずです。
次にiPhoneの画面を下からたくし上げます。するとおなじみのこの画面がでます。

真ん中左の「画面ミラーリング」をタップしてiMacの名前が出たらそれを選択します。

これでiPhoneの画面がZoom上に共有されます。
書画カメラにしたいときは、iPhoneでカメラアプリを出せばすぐです。
ミニ三脚で固定すると書画カメラ風になります。




2020年4月24日金曜日

オンライン授業に関する自分なりの方針(講義編)


  • 同期か非同期か。非同期にする。リアルタイム配信はテレビの生放送と同じ。熟練が必要。なのでオンデマンドとする。
  • 時間割に合わせてコンテンツを解禁する。これでリズムを担保する。やりとりは時間を決めてチャットで行う。Zoomのチャットが使えるか。
  • 世界中の大学や学校が一斉に時間割に従ってZoomでオンライン授業をするので、ネットワークの負荷がこれまでにないほど強まる。よって脆弱なプラットフォームは避ける。私は信頼度の高いGoogle内に収める。BloggerとYouTubeとEvernote。Evernoteは別企業だがGoogle上にデータがあって安定している。YouTubeは閲覧者が画質をコントロールできるし、現時点で最高画質を1段階下げている。
  • ベースをZoomにしない。ネットへの負荷が大きい。Zoomは説明動画を作るのに便利なので、事前にPowerPointやホワイトボードを使用した短い説明動画を作って、BloggerかEvernoteに埋めておく。リンクを飛ばすのでもよいが、学生が元に戻れなくなる可能性がある。
  • モバイルファーストにする。しかし入力の質と量は圧倒的にパソコンの方が有利であることをそのつど伝える。
  • スマートフォンを知的ツールとして活用できるように指導する。Microsoft365はとくに必須。
  • 視聴実態を正確に把握できない点ではテレビ視聴率と同じ。猫が見てても視聴率。なのでZoomのリアルタイム少人数授業で顔出しをさせないかぎり、出席に信頼性はない。なので授業体験時間を評価するのではなく、学生自身が学んで考えたことを表現したものを評価対象にする方が信頼できる。
  • 表現されたものだけを評価するスタイルの授業は一種の反転授業である。模範的な反転授業と言えないまでも、それを目指す。
  • 学びの主体は学生である。
  • YouTubeの使い方を指導することが必要。アカウントを取ること。再生速度を変える自由があること。画質を下げて通信量を節約できること。字幕を表示できること。これらは動画内下部にある設定でコントロールできる。設定のアイコンを教えておく。授業で使用した動画を保存する習慣も付けさせる。チャンネル登録も推奨。根本的にはYouTubePremiumを推奨しておく。ファミリー共有も有効。
  • YouTubeについては、とくに歴史的映像と英語圏で制作された説明動画に使えるものが多い。教員の役割はキュレーションである。少なくとも10件以上の動画から1件を選んで、どこからどこまでを見せるかを吟味する作業が必要。
  • 1つの科目内で複数のシリーズコラム的なシーンを設置しておく。成績評価に直結しなくても長い目で見れば有効な知識やノウハウを伝えるのでもいいし、頭の休憩として弛緩できる材料でもいい。
  • 学生が1回分の講義内容を視聴するのに90分かかると想定して、複数の細かいパーツをタイムラインとして並べる。1つ1つのパーツをゲームのようにクリアしていくイメージ。学生が自分でチェックマークを入れられるようにできないか。チェックを入れると何かリスポンスが出るような仕掛けがあるといいが。
  • 説明動画に対してノートテイキングできているかどうかを確認したい。自発的にノートを取る学生はごく少数なので、事前にノートを用意する指導が必要。聞き流しの習慣のある学生は総じて伸びない。
  • 学生の表現をどうやって受け止めて評価するか。ファイルではなくフォームにすると軽量にできる。
  • 学生のリスポンスについてはMicrosoft365Formsに一元化したい。GoogleFormsもほぼ同様の機能を持つ。択一式だとその場で円グラフか棒グラフにできる。長文にすると3000字まで記入できるできるのでミニレポートがそっくり入る。
  • EvernoteかBloggerの限定公開ページには詳しい説明を書かないで指示書にするやり方もある。たとえばYouTubeの動画から動画に飛ぶことは可能である。コメントに書いておけばいい。Bloggerだとページからページに飛ばせる。オリエンテーリング式。これを徹底すると授業が完全にゲーム化できる。教科書指定してあるときに何ページを開いてとかやるのと同様の効果がでる。指示に従わないと途中で脱落する。
  • こう考えると、講義内容を再パッケージ化した方がいいのかもしれない。
  • 書籍の一部を数ページにわたって読ませたいときは写真にせざるをない。そのさいはEvernoteを期間限定共有にすればいい。ただし手動。あるいはパスワードで保護する。このパスワードを見つけられるかどうかを分岐点とする。パスワード探しを学びのエンジンにしよう。
  • ピエール・バイヤール「読んでない本について堂々と語る方法」シリーズも作れそうな気がする。これは研究準備用。「知識クラスターをつくる」シリーズ。
  • Forms投稿を集めると、自分の学びのポートフォリオになるようにデザインする。最後の3回分はレポートに代替せよとのことなので、学びのポートフォリオを制作してもらう。
  • ということで「講義はハイパーテキスト双六オリエンテーリング式反転授業にする」というのが結論。今日から始めよう。

2020年4月23日木曜日

FBグループ「授業設計のすすめ(大学編)」へのコメント

FBグループ「授業設計のすすめ(大学編)」へのコメント。

私はだいたいこの先生の考えに近いです。
リアル授業では毎回QRコードを映写してその日専用のウェブページに誘導して、そこに動画資料やニュース記事へのリンクを付けてやっていました。今年度は省力化してEvernoteの共有とBloggerにするつもりでした。全面オンラインになったので口頭説明は4つぐらいに小分けして事前にZoomでレコーディングしておき、それをYouTubeに限定公開しておくつもりです。つまり授業時間に学生が入るのはEvernoteかBloggerになります。そこへのリンクは学内教務システムに貼っておきます。学生のアドレスにメール配信もできます。このお知らせについては補助的に専用のTwitterアカウント上でもフォロー限定で公開します。
一番大事なのは学生自身が授業内容を手がかりにして自分で学び自分で調べ自分で考えたことだけを評価することです。反転授業っぽくしています。さいわい本学ではMicrosoft365が使えます。大学はサポートはしてくれないので自己責任で使うことになりますが、とくにFormsが使えます。もうファイルのやり取りをしている時代でもないですし、モバイルファーストにすべきですので、どれだけ軽量にするかを考慮すると、ファイルよりフォームに徹底した方がいいと考えます。
過去2年、大規模授業において試験をやめて平常点評価として、出席点ではなく毎回のForms投稿だけを対象に評価してきました。1回7点にして15回で105点になります。リアル授業では3分の1が落ちますが、最初から食い付いてきた学生は100点を超えます。昨年度は5セメスターで1200名超の受講者を1点刻みで評価しました。昨年度前期はたまたま集中したので900名の採点で2週間かかりました。採点の仕方についてもノウハウがあります。直近セメスターは2科目300名の採点で5日にできました。
ということでオンライン授業もなんとかできるかと思っています。

2020年4月21日火曜日

多様性の喪失、ZOOMデスマーチ、ラッダイト主義

言葉が駆け巡って眠れないので起きてメモしておく。
遠隔授業への対応として、どういうわけか誰も使ったことのないツールだけがクローズアップされて、どういうわけか365さえ排除されているのはやはりおかしい。もっと多様なやり方が山ほどあるのに。
これは要するに単位制度を学修時間で管理する発想の延長線上にある判断である。
じつは成果物で評価する方法もあるはずなのに、なぜかそういう議論にならない。成果物で評価するさいには、それを作成する学生の作業時間を学修時間に換算する。ここは教員の裁量による。
今回、遅れに遅れて提示された本学教務部の通知によると、ケースマとZOOM以外は自己責任でやれということになっている。
懸念がたくさんある。
1つは多様性の喪失。ZOOMデスマーチにならなければいいが。これはあとで述べる。
もう1つはラッダイト主義の台頭である。これは科学社会学などの用語で、歴史的なラッダイト運動に引っ掛けてイノベーションへの感情的反発を指している。つまりイノベーション創出の反対がラッダイト主義なのである。
今回のムーブメントはすでにラッダイト主義を召喚している。危機管理の一環としての強制的な技術導入だからである。一種のショックドクトリンになっている。
ラッダイト主義はたんにローテクオヤジのイデオロギーではない。むしろ地に足をつけて働いてきた熟練労働者の思想である。ショックドクトリンは危機的状況に乗じてこの人たちの成功体験と権威を打ち砕く。
そして大学教員とはまさにこのような人たちである。この人たちに左足で板書せよと言うようなものなのである。
ゆえに、技術導入から発想するのはまちがいである。
物理的に集合できない現在の環境において既存の知識体系をどのようなメディアに乗せていくかから考える必要がある。メディアは知的可能性も開くが、強く内容を規制するものでもある。問題なのは規制の方だ。
得意な料理を新しい弁当箱に詰める。しかし弁当箱を選ぶことから始めないと、それは一種の強制力・権力行使になってしまう。
これは組織としての選択でもあるが、ひとりひとりの教員が選択することでもあり、学生が選択することでもある。必要なのはバッケージではなく選択肢である。他の選択肢を明確にしないまま、ひとつのパッケージだけを推奨するのはたんに管理上の手間の節約にすぎない。大事なのは管理上の手間の節約ではなく、教員と学生の手間の節約の方であり、こちらの方の総量は管理者の手間の総量よりはるかに多いはずだ。つまり優先順位が転倒している。
ラッダイト主義は学生にもある。自前のパソコンを持たない人のほうが圧倒的多数である。実際、たいていのことはスマホでできる。Wi-Fiがあるとは限らない。このまさに危機的状況の中でパソコン環境を整えよというのは危機的状況に平時の発想を持ち込むことである。そこに気が付かないと。マスクがなければ自分で作るとか、そもそも外に出ないというのも有力な選択肢であるはず。
それを自己責任で勝手にやるならやればいいというのは、完全に事故誘発的な発想である。寛容なのではない。放置である。自己責任と言うのは、正確には「事故が起きればその教員は処分される」ということである。
それが危機的状況における的確な判断といえるだろうか。それは平時の発想であり、幾分かは業界のヘゲモニー争いの1分岐にすぎない。
教員にも学生にも選択肢が明確でなければならない。そうでないと、教員のサボタージュや学生による学費返還運動や感情的な紛争がモグラたたきのように生じる。闘争心のない弱い心の人たちで構成されるキャンパスであれば大量留年が生じかねない。これが私の懸念するZOOMデスマーチである。
単一性はリスクがある。むしろ多様性を確保するほうが組織や集団としての生存戦略として優れている。教員と学生の多様性を認めること、何よりも知識の多様性を認識すること。それをちゃんとサポートし続けること。そのためには集中管理方式ではなく分散的なネットワーキングを組織内に作る必要がある。順番をまちがえるな。スタートラインを忘れるべきではない。

2020年4月5日日曜日

オンライン授業のために


国学院経済の野村です。オンライン授業、どこも泥縄対応になるのは仕方ないですね。
しかし具体的なツールやプラットフォームの選定・実装・サポートにあたり、いくつかの原則が何度も問われているように思います。そこを明確にしておかないと教員も学生も混乱するのではないでしょうか。
私自身はヒラの教員として、オンライン授業に関する大学管理者の考え方は、こうあってほしいと願っています。
(1)統一方式ではなくメニュー方式。
ツールやプラットフォームを1つに決めない。多様なメニューとして具体的に提示して担当教員が選択できるようにする。それぞれの選択肢について詳細な手順を説明する。
(2)単位認定の基準を明確にすること。
学修時間なのか成果物なのか。大勢はZoomやTeamsやHangoutなどを使用して時間割通りのオンライン授業をすることでリアル授業の学修時間をそのまま置き換えるという流れだが、各主体の実行の確実性が担保できない。なので毎回の成果物の平常点評価が適切ではないか。少なくとも、そういう選択肢を認めてほしい。Office365のFormsとGSuiteのFormsのようなサービスを利用すれば大量のリスポンスもスプレッドシートに収まる。こういう仕組みをすべての教員に提供してサポートしてほしい。
(3)同期は必ずしも必要ではない。
非同期で期間を設定するべきである。上流から下流まで似たような時間帯にオンライン授業をするとトラブルが続出するのは目に見えている。とくに初めての経験になる大学ではカオスになって各主体の不満が感染爆発しかねない。非同期主軸でいいと思う。
(4)秘伝のタレは2度捨てる。
オンラインではリアル授業のノウハウは使えない。「これじゃあ、これができないじゃないか」という発想はまちがっていて、むしろツールやプラットフォームに即して講義内容を1から再構築する方がむしろ楽だと思う。経済学部でアンケートすると、LINE100%とInstagram80%とTwitter60%ができる。私自身は授業用TwitterアカウントとEvernoteの共有リンクだけでやるつもりだが、新しいお弁当箱に得意な料理を詰めるという発想でやれば楽しい作業になる。
(5)教員がいち早く適応して準備しないと大量の不合格者が出かねない。全学的に大量の留年を生じさせかねない。なので大学は早くメニューを提示してほしい。早く、だ。このさい、スキルのないトップダウンではなく、スキルのある教員からのボトムアップが必要。ここでやってるようにアイデアや経験値を学内募集すればいい。大学管理者は素早く決断することで、教員に楽しみながら試行錯誤できる時間と環境を作ることができるはず。

表現プラットフォームへの招待1.0

# 表現プラットフォームへの招待1.0
##  1 表現プラットフォームの目的
### A プロジェクトの目的
 本書は平成30年度 学部研究費による共同研究プロジェクト「経済学部のすべての人のための表現プラットフォームの検証実験的研究」(研究代表者・野村一夫)の一環として制作された招待状です。
 この研究プロジェクトチームのメンバーは次の通りです。

野村一夫:表現プラットフォーム構築と運用、モデル授業担当、ハブチーム運営
高橋尚子:情報学教育参照基準からの検証
根岸毅宏:経済学部教育における位置づけ評価
金子良太:テスター

【研究目的】
①研究経緯:研究代表者は本学「平成28年度特色ある教育研究」および「平成29年度特別推進研究助成金」採択プロジェクトとして「授業の作品化」と「作品制作過程における学びの組み立て」について研究を推進してきた。その中で業務用クラウドの用途開発を企業と協力しておこない「表現プラットフォーム」の構築を進めてきた。
 ②高等教育を主体的学習にシフトさせていくには、教員と学生が使える教育用の表現プラットフォームが必要である。学んだことを表現することによって新しい知識を学生たちが個体発生的に再生産することによって主体的学習は進む。
 ③経済学部学生の場合、ビジネスに直結する多彩な表現形式を経験する必要がある。同時に教員サイドもまた洗練された表現活動のためのプラットフォームが必要だと考える。
 ④そこで本研究では、過去2年の研究プロジェクトで用途開発してきた表現プラットフォームを経済学部の教員学生等に開放するために、どのような環境整備が必要であるかを実証実験する。これが成功すれば、高等教育におけるメディア・プラットフォームの条件を先駆的に提示できるとともに、表現活動を活かした新しい人文社会科学教育を構想できる。

【研究計画・方法】
①可能な表現形式:表現プラットフォームで想定している表現形式は、読書ノート、研究ノート、論文、ソーシャル的投稿、チャット、ラジオトーク、写真、動画、EC店舗展開、カタログ、ポートフォリオ、エントリーシート等。
 ②クラウドベース:WordPressによるウェブ、Workplace by Facebookによる作業用ソーシャルメディア、直接文章などのコンテンツを執筆できるStock、クラウドベースで版下制作ができるToppan Editorial Navi、PDF入稿によるオンデマンド印刷。Office365とG-Suitとこれらを組み合わせて表現プラットフォームとする。
 ③サポート態勢:今年度は野村ゼミをハブとしてサポート作業を請け負うという前提で学部内でモデル授業を募集し具体的に表現プラットフォームを運用する。 
④上記の活動をおこないながら、問題点とノウハウを蓄積し、経済学部教育や情報教育として評価する。同時に認知科学的転回に基づく高等教育の新しいスタイルとして全国の大学に提案できるようにしたい。
 ⑤報告書に基づいて論文を投稿する。基本的な考え方とマニュアルを整備して印刷配布して議論の場を作る。

### B メゾメディアの考え方
 「メゾメディア」という概念は、2016年度におこなった「国学院大学 特色ある教育研究」に採択された「すべてクラウドによる授業の作品化」プロジェクトで初めて提案した概念です。私の造語です。
 メゾメディアとは、配付範囲あるいは到達範囲を限定したメディアの総称です。マスメディアは全面公開が原則です。だれでも一定の条件を満たせば、情報・知識・コミュニケーションを得ることができるメディアです。たとえばテレビを買えば誰でも番組を観ることができるというように。
 逆に「通信」と言われるメディアは、一般に公開されません。当事者同士でコミュニケーションをおこなうためのメディアです。
 「メゾメディア」と呼びたいメディアは、マスメディアと通信メディアの中間領域にあります。**ある一定の範囲で共有するけれども、共有範囲が明確に定義されていてコントロールできるメディアのことです。**SNSはその典型です。
 そもそも学生の制作物は、発展途上の一里塚なので、そのまま公開するのは難しいのです。よくあるコピペ乱用のレポートが1つでも混じっていれば、冊子の評価がどんと落ち、いっしょに掲載されている制作物も含めて評判が悪くなってしまいます。
 だから、大学は学生が書いたものや動画を公式サイトや入学ガイドにはそのまま掲載することはほとんど皆無です。だから経済学部では経済学会の方の費用で学生の論文集を作ったり、独自のサイトを設定して現役ゼミ生によるゼミ紹介を掲載したりしてきたのです。それはあくまでも教育的見地からやっているのです。
 **授業での成果物(プロダクツ)は適切な範囲で共有するべきです。**たとえば卒論は指導教員しか読みません。あまたのレポートも、それで終わりです。ゼミ仲間にも共有されないし、まして後輩たちにも伝わらない。伝わらないから授業としては毎年同じような繰り返しで、授業そのものがなかなかアップデートできないのです。それで100年やってきたということです。
 しかし、この20年間に急速にアーキテクチャーとインターフェイスの進化が進みました。だれでもブログを書き、だれでもSNSでかんたんにグループ・コミュニケーションができるようになりました。かつてはサーバ管理者しかできなかった設定も今ではだれでも自分やグループの設定をコントロールできるようになりました。
 これはネットだけではなく、印刷や放送の領域にも及んでいます。平成28年度「特色ある教育研究」で使用したトッパンエディトリアルナビは、クラウド上でページものを編集できる画期的なサービスです。もともと出版社用に開発されたものなので文庫判と新書判しかありませんでしたが、インターネットとブラウザだけで、こまかい編集作業ができ、ゲラもPDFですぐにできます。EPubもできます。クラウドでないと、こちら側の設備が相応に必要で経費がかかります。クラウドですと、ブラウザだけで済みますし、操作もかんたんです。これは私たちの要望にこたえて現在はA4までできるようになりました。
 授業体験もたいせつですが、それをドキュメントとして残すこともたいせつです。そう考えて「すべてクラウドによる授業の作品化:メゾメディア活用実践研究」というタイトルのプロジェクトをやりました。平成30年度はこれをさらに展開したいと考えて大学の特別研究助成に申請しました。そこで提案したのがリアルなメゾメディア工房という「場所」です。工房とはアトリエ。ものを作る場所です。最近はFabと呼ぶのがオシャレなようなのでMesoMediaFabと呼んできました。
 平成30年度学部共同研究では、それを一歩進めて「経済学部表現プラットフォーム」としました。

### C 経済学部のすべての人のための表現プラットフォーム
 学生だけを対象に考えているわけではありません。経済学部のすべての人のためのプラットフォームです。
 教員が教材や研究ノートをかんたんに限定公開できる。
 学生・院生はクローズドなグループの中で緊密な情報共有をおこないながら、いつでも議論や企画ができる。
 職員が行事資料やマニュアルをしかるべき人たちに情報共有できる。
 卒業生とつながることができる。
 「1人だけで勉強する」のではなく**「みんなで賢くなる」**のがゼミの本質であり、学部の本質だと考えます。ここはそういう規模で「みんなで賢くなる」ための**ナレッジ・コモンズ**として活用していきたいと思います。

### D 「学生の安全」と「コンテンツ共有」の両立
 メゾメディアという概念は、学生が作ったコンテンツの公開にあたって、安全性を優先して、しかるべき範囲とリーチするメンバーを限定して配付・共有するためのプラットフォームを指します。教育現場における適切な範囲内でのコンテンツ共有のことです。どれがメゾメディアかということより、**どのように運用するか**に焦点があります。したがって**「学生の安全」と「コンテンツ共有」の両立**を目指したいと考えます。そのために必要な確認事項を明記しておきます。
(1)メンバーを増やすことができるのは管理者に限定します。
(2)参加者全員に以下の条件のパスワードを求めます。
・12桁以上
・大文字小文字混入
・記号 !”#$%&'() を必ず入れる
・KEANのアドレスを利用しますが、**KEANに使っているパスワードは絶対に流用しないでください。**そこがこのコミュニティにとってのセキュリティホールになるからです。
・覚えられるパスワードは、たいていパスワードの機能を果たしません。パスワードの使い回しも厳禁です。乗っ取られたときの被害がその分、深刻なものになります。
(3)推奨する利用環境
・スマートフォン。主としてパソコンで利用する方も、2段階認証のさいにスマートフォンが必要です。若い人は問題ありませんが、今後スマートフォンを利用しない先生が参加する際には、さきにスマートフォンを用意していただくことになります。クラウド上では、スマートフォンが本人確認の証拠になるからです。
・パソコン。完全なクラウドを使用しているのでOSは限定されません。性能もあまり関係ありません。**とにかく新しいもの**にしてください。HPやASUSの3万円のものでかまいません。もちろんタブレットも使えます。iOSでもAndroidでもWindows10でもかまいません。学部レベルにチューニングしてありますので、LINEのようにスマートフォンだけで十分なワークはできません。必ず用意して下さい。
・ブラウザ。基本はGoogle Chromeにしてください。Chromeにパスワードを覚えさせておくと日常的には手がかかりません。メゾメディア工房をブックマークバーに入れておきましょう。SafariもEdgeも同様です。
(4)**何か納得のいかないことがあれば、放置することなく、すぐに野村までWorkChatでお知らせ下さい。「異変に気づいた人には通報する義務がある」**と考えて下さい。深夜以外はたいてい対応できます。
(5)2段階認証が原則です。必ずスマートフォンと連携してください。
 いきなり難しいことを要求するようで申し訳ないですが、セキュリティ確保のため「2段階認証」をしてください。
(6)運用上のボトルネック
**案外、パソコンを持っていない。**
 これまではスマホで足りていたと思いますが、これからは両方使うことになります。3万円台のマシンで十分なので何とか手に入れましょう。HPやASUSなどのネットストアで買うと最新のマシンが購入できます。クラウド時代はハードディスクだってもういらないんです。自習室のパソコンを当てにするのはやめましょう。
**案外、メールを見ることがない。**
 大学のメールはスマートフォンでかんたんに確認できます。OutlookとExcelとWordとPowerPointは必ずスマートフォンに入れて設定しておいて下さい。ゼミでのプレゼンはスマートフォンのPowerPointアプリでかんたんにできます。HDMIへの変換端子を用意して下さい。HDMIを使えば、学内のほとんどのプロジェクターとテレビが使えます。
**案外パスワードの使い回しがある。**
 パスワードはサービスごとに替えるべきです。小さなノートに書いておいてカバンの中にいつも入れておくといいです。無印良品のパスポートノートなら携帯に便利です。パスワードはサービスごとに替えましょう。そうすれば、1つのサービスが乗っ取られたり侵入されても、他のサービスに累が及びません。

## 2 表現プラットフォームの概要
 用意したすべてのプラットフォームを使わなければならないということはありません。学びの内容とスタイルによって選択して下さい。
### ワークプレイス:Workplace by Facebook
 もっとも基本となるのがWorkplaceです。これはFacebookが提供している業務用ソーシャルメディアです。SlackやLINEワークスなどが競合相手ですが、アカデミックがありません。Workplace by Facebookはアカデミックがあるので、正式に登録して審査ののち無料で使えるようにしてあります。
 すでに野村ゼミとFAチームが使用しています。グループを作ると、その中でさまざまな情報共有ができます。画像は私の投稿にしてありますが、学生も当たり前にやっています。
ディスカッションの例:PDFを共有したところ。

A4判の写真集の編集過程のひとこま。

共有した写真もこんな感じで整理されます。

これはラジオトーク動画を投稿してもらったところ。1時間ぐらいの動画も収まります。

イベントもグループ内でかんたんに共有できます。

アンケートもかんたんにできます。個人が特定できます。

ゼミやクラスには向いていると思います。自炊をすれば文献の共有もできます。「秘密のグループ」として設定するのが基本です。外部からはもちろん、他のWorkplace参加者にも見えません。見えないので、基本的に教員か先輩が入るようにして下さい。
 招待メールを発行して、2段階認証をしてもらいます。
### WorkChat
 これもWorkplace by Facebookの一部です。グループを作るとWorkChatグループも自動的にできます。これはLINEグループとほぼ同じ使い方になります。Workplace登録者は自由にメンバーとチャットグループを作ることができます。
 Workplace本体のグループは、大きな括りにして、細々とした連絡はWorkChatでやるのが適切です。たとえば、野村ゼミでは、1セメスター分で1グループを作ってきました。
2年メンバー決定から夏休み「野村ゼミ13期スタートアップ」
2年後期「野村ゼミ13期キックオフ」
3年前期「野村ゼミ13期トランスモード」
3年後期「野村ゼミ13期セオリー道場」
3年2月から「野村ゼミ13期シューカツエンジン」
イベントはそれぞれのグループ内で設定します。数人の作業チーム単位ではWorkChatグループを作って、そこで連絡や議論をしてもらいます。ゼミやクラス全体のWorkChatグループが基本です。

### GSuite
 5年ほど前にGoogleのGSuiteアカデミック版を登録しました。審査ののち無料で使用しています。現在はメーリングリストやGoogleDriveに利用しているだけですが、Workplace by Facebookの前は、ファイル共有を中心に活用していました。ドメインは@kgi.tokyoです。たとえば私の場合はnomura@kgi.tokyoになります。ビジネス用と同じフルスペックですので、およそクラウドでできることはたいてい可能です。Office365とほぼ同じと考えて下さい。ただしYouTubeがあります。動画投稿もかんたんです。ただしローテクな人によっては、わかりにくい使いづらいと言われることがあります。
 招待メールを発行して、2段階認証をしてもらいます。メーリングリストもかんたんにできます。

### Stock
 リンクライブ社(http://www.linklive.co.jp)が開発したStockを採用しています。これはベータ版から使っていて、平成30年2月から有料になりました。業務用ですが、大学としては最初に使い始めたので、有料化する際にも意見を言う機会があってアカデミックプライスを設定してもらっています。
 そもそもStockを採用した理由は以下の通りです。
1. 当初、クラウド上のライティングスペースとしてGSuiteを予定していましたが、学生が使い切れず、共有範囲の調節もむずかしいために、クラウド上のライティングスペースを探しました。Stockは業務用の文書管理クラウドなので、特定の文書にコメントが付けられます。共有範囲も微調整できるのが好都合でした。
2. 文書作成はWordでできそうなものですが、Wordで書かれた原稿をクラウド上に置き換えるのが、じつはひと手間かかります。加えて古いWordの予期せぬ指定が悪さをして、途中でエラーが出ることが多々あります。この指定は見えないので苦労します。というわけで、作品を制作するときはWordを推奨していません。
3. 文書管理クラウドとしてはサイボウズ社のKintoneがありますが、1人あたりの月額料金になっていて、被験者の学生の人数を契約するとなると高価です。
4. Stockであれば、スマートフォンでも文章が書けます。これはパソコンを所有していない学生に書かせるためにはとても都合がいいです。
5. チーム単位で原稿を書き、それをまた修正する作業に向いています。しかも、かなりシンプルなのがとても使いよいと思います。同様のクラウドサービスとしてはEvernoteがありますが、こちらは複雑で、リテラシーが高くないと使えません。とくに共有の設定をまちがえるとリスキーな事態が発生しますので、クローズドであることを保証してもらえるサービスでなければなりません。これはGSuiteもOffice365も同様です。
6. 登録を一斉に「招待メール」という形でできるので、まとまった人数を登録するのに向いています。

というわけで、だいたいの流れは次のようになります。
1. チーム単位の打ち合わせや連絡は、チーム専用のWorkChatでおこないます。
2. チームで決まったことはWorkplaceに投稿してゼミ全員で共有します。
3. 完成原稿はStockに投稿します。Word書類はドラッグすると、ここに収まります。
4. 印刷用のファイルやネット公開用のファイルは、Stockに保存することにします。
ここではファイルを軸にチャットができます。主役はファイルです。完全原稿になったものをここにアーカイブ(貯蔵)します。ここがそのまま成果物の倉庫になります。
 Stockは**ライティングツール**としても使えます。直接、自分のノートに書けばいいんです。Stockに満足できなくなったらEvernote(無料)をおすすめします。

### WordPress
現在公開されているウェブサイトの多くがWordPressで制作されています。MySQLというデータベース上に個々のコンテンツを記録して、それを動的に組み合わせてページを表示します。HTMLはわからなくてもいいんです。
デザインは「テーマ」と呼ばれるスタイルシートのセットを差し替えることで、サイトのデザインをすぐに変更できるようになっています。
2002年から「特色ある教育研究」でkuin.jpを立ち上げ、その後、学部共同研究と経済学会で運営してきました。ゼミ募集の時にも活躍しましたが、これはいったんが平成29年7月に終了しました。そのうちフィールドワーク関連の記事をまとめていたKaleidoscopeは現在私のサーバー上に移築してあります。移築のさい、他のゼミなどで活用してもらえるよう、WordPressにhttp://Econorium.com を設置しました。Kaleidoscopeは古いHTMLで作られていますので、そのままサブディレクトリに移築しました。http://econorium.jp/fur/
このサーバー上には私の「ソキウス」https://socius.jp もありますし、途中で停止していますが、野村ゼミ企画「トランスメディアマガジン計画」のサイトもあります。https://transmedia.tokyo.jp また、私が終活を始めた際に本やCDをリユースするためhttp://memefab.me をゼミ生が運営したこともあります。これは本物のECサイトのウィジェットを組み込んであって、バックヤードに在庫管理や会員管理などがちゃんと揃っていて、まともにECサイトのしくみを勉強できるものです。第2期が終了したところで、現時点では第3期準備中です。
1つのレンタルサーバー上にはいくつもWordPressサイトを立ち上げることができますので、デザインにこだわりのあるチームサイトも用意できます。ただし個人の管理なので、アーカイブを保存した上でサイトを削除するといった事態がないわけではありません。



### トッパンエディナビ
Wordで作成して、それをコピーして冊子とするというものが、まったく手に取られないという現実があります。それを何とかしたいと考えていて出会ったのがトッパンエディトリアルナビです。凸版印刷が作った出版社専用のクラウド型編集システムです。出版社以外ではうちのプロジェクトが最初になりますし、この本はそのシステムとオンデマンド印刷を組み合わせたビジネスモデルの最初の1冊になります。判型が文庫と新書しかなかったために、多くは電子書籍用に使われていたのでした。これだと、もうAdobeInDesignを使う必要がなく、しかも文章中心で本を作ることができます。

次は平成29年度「特色ある教育研究」で作った本。

次は平成30年度特別推進研究助成金プロジェクトの中でゼミだけで作った本。大判のはA5判フルカラーです。
以下は編集画面です。


ブラウザだけでできるので、どの学生でも自分で記事を登録できています。校正はそのつど印刷用PDFを請求しておこないます。クラウド側で印刷用のフォントに交換するので30分ほど時間がかかります。そうするとトンボ入りの校正刷りが出てきます。

郵便もUSBメモリも必要ありません。しかも高品質です。フォーマットが1ダースぐらいにしぼられているので、テキストや画像データを流し込むだけで高品質な本ができあがります。私はこれを本学全体の教育研究用プラットフォームにすれば、いちいち申請とか競争入札とかしなくてもいいと考えていますが、学内の反応としては「そこまでしなくても」という感じです。

### 製本直送
PDFがあれば、同人誌専門の印刷屋さんですぐに冊子になります。もちろんコピー機でも可能です。それをネット上で全部済ませることもできます。私が使っているのは[製本直送.com | 1冊から注文OK。安さと高品質のオンデマンド印刷](https://www.seichoku.com/))というところです。
ゼミコンテンツをいろいろ作ってきましたが、こういうものもかんたんにできます。ただし公費では競争入札が必要ですので、営業さんが来ない印刷会社にウェブから直接発注はできません。


## 3 Office365との連携
大学ではOffice365がフルに使えます。ほんとうはSharePointも解禁して自由に使えると一元化できると思いますが、なかなか難しいようです。
もちろんK-SMAPYIIがありますが、教室内で学生にアンケートを取ったりディスカッションをするには不向きです。大教室であってもインタラクティブであろうとすると、モバイルファーストのクラウドにした方がいいと思います。幸いWi-Fi環境が強化されて、大教室で一斉にアクセスできるようになりました。
私が愛用しているのはOffice365の中にあるFormsというアプリです。と言ってもスマートフォン用のアプリはまだありません。ウェブから入ります。
大教室科目の試験をやめて平常点評価にしたので、このFormsを駆使して毎回ここに課題を投稿してもらいました。


これの解答は長くなるので、もう少し感想めいたものをキャプチャーしてみましょう。

これは翌週の授業の冒頭で共有するように投稿順と解答だけを表示していますが、Excelでダウンロードするとフルスペックのデータが出てきます。
マイクロソフトはFormsProを近々リリースするとのことです。これは双方向授業に使えると思います。

## 4 表現プラットフォームを駆使する学び
### A 授業の作品化
 どんな授業体験も受講者の記憶にしか残らないために、同僚にも学生にも伝わらないことにずっと苛立ちを覚えていました。ネット公開よりも印刷物を手渡しする形で配付するのが安全ですが、印刷物にするのは難易度が高い。エディナビは、いったん新書判に体裁を決めてしまえば、デザインのことはほとんど考えなくていい。学生アルバイトにもトレーニングがほとんどいりませんでした。 
 他の授業の成果物として手触りのある目標物を可視化して見せることができるのは教育上大きな利点があります。ゼミ募集のブースで成果物を並べていると、多くの学生たちがゼミやクラスの本を手にとってビックリしていました。就職活動にも勉強の成果として提示できます。文庫判・新書判は収まりがいいので、本棚に残る確率も高いでしょう。学生に作品を持たせることの重要性は、目の前のセンター試験廃止以後、ますます増すと考えています。 
 エディナビはクラウドなので研究室と自宅のiMacとChromeでアクセスして作業しました。Adobeのように使いこなすまでに時間がかかるツールとはちがうのです。学生アルバイトにもトレーニングがほとんどいりませんでした。かつては学生にAdobeを使用させるためにインストール済みのパソコンを貸与するやり方をしてきたのがうそのようです。印刷についてもオンデマンド印刷でリーチをコントロールやり方をとりました。通常、公費で印刷発注するには入札から始めなければならないし、1つ1つの授業ごとに前年度に予算申請しなければなりませんでしたが、エディナビは包括的な委託費として計上できたので、実施年度には編集に集中できてとてもよかったと思います。 
 他の授業の成果物として手触りのある目標物を見ているので、続く学生たちはそれなりにがんばったように思います。就職活動のさいに提示する学生もいます。経済学部では2年前期にゼミ募集をするのですが、ブースで成果物を並べていると、多くの学生たちがゼミやクラスの本を手にとってビックリしていました。同じような授業体験をしているはずなのですが、こうして残っていることが衝撃だったようです。文庫判・新書判は収まりがいいので、本棚に残る確率も高いでしょう。学生に作品を持たせることの重要性は、目の前のセンター試験廃止以後、ますます増すと考えています。 

### B 公開するマインドセット
表現して公開する機会を増やすというのが本プロジェクトの目的です。たとえば野村ゼミでは次のようなモットーを掲げて取り組んでいます。
1. 現在のトランスメディア環境について総合的に知識を学ぶ。ジャンルや技術の枠組みにとらわれない視野を獲得する。
2. 速攻で何でも作ってしまうクリエイターとして、いつも作品あるいはプロダクツを制作できる人になる。
3. 即興的に自在なコミュニケーションができる人になる。
4. 誰にも負けない読書力をつける。
5. 好きとか嫌いとかにとらわれない高いレベルの対話的知性をゼミに生み出す。
そして「ゼミの5つのエンジン」として次の5項目をモットーにしています。
1. ノンジャンル(好奇心いのち! 好きか嫌いかはどうでもいいじゃん)
2. 速攻(前のめりでスタートダッシュ! スピード感を優先する)
3. プロダクト(ひたすら作品づくり! 作ってみないとわからない)
4. 即興と対話(手ぶらで何が言えるか、何ができるか、何をわかりあえるか)
5. オープンなマインドセット(すべて公開する不屈の根性)
ゼミの作品形式(メゾメディア)としては次の3つのレベルになります。
レベル1(非公開コンテンツ):Workplace、WorkChat、Stock、ゼミ内プレゼン、企画編集会議、対話、討論、メゾメディア工房(815研究室)でのティータイム
レベル2(公開コンテンツ):名刺、パンフレット、新書、ラジオ番組、公開ウェブ。
レベル3(作品としてのゼミ):ドキュメンタリー
使用するクラウドツールは次の通りです。
1. Workplace by Facebook(ゼミ活動をタイムラインで共有)
2. WorkChat(かんたんな打ち合わせ)
3. Stock(完成稿ストック)
4. G-Suit(@kgi.tokyo)Googleエデュケーション
5. Toppan Editorial Navi(トッパンエディナビ・ゼミの手帖と新書制作)
6. プリスタ(http://www.printsta.jp/) ・名刺制作)
7. MEME PAPER(リーフレット、カタログ)

### C タフな議論能力
 **非同期型のメディア**は、それなりに余裕があるし、テキストになるので「言った言わない」トラブルが少ない。ただし**テキストに置き換える言語能力**が求められます。ですから、毎日考えたことをFacebookに書いていると、リスポンスを返してくれるのは、高い言語能力を誇るハイスペックな大学教授ばかりになります。教え子たちはFacebookのAIによって私のタイムラインから消えてしまいます。逆もそうなんです。
 大学は総じてのんびりしています。たいていは巷間ビジネス文脈で言われているほどスピード感はありません。
 理由はいくつかあるでしょう。
(1)優先順位をまちがえている。**公的なものが優先するはず。**
(2)**決断ができない。**考えたり調べたりしないから思考停止する。つまり手数を惜しむから決断できない。
(3)処理能力が追いつかない。**数をこなせない。**
(4)**リア充方面を優先している。**だったら引きこもってはいけない。
 他方、**何か判断を求めている人には明確な理由があります。それに無反応でいることは、実質的にはブレーキをかけているのと同じ効果になるんです。本人は「自分は何もしていない」と思っているかもしれませんが、そうではありません。相手に「ノー」を突きつけているのです。沈黙は「ノー」なんです。**
 だから、そういう人は次のことをすべきである。
**なるべく現場に立ち会う、顔を出す。**
**だれかにヘルプして引き上げてもらう。**
**自分のコストの損得勘定をやめてみる。
**感情計算はやめた方がいい。**

 私の第一の希望は**「リスポンスのよい人」**になってもらいたいということです。その最初の第一歩が「いいね!」(Like!)なんです。「いいね!」なら、それに対して反撃することはルール違反になりますから安心して付けて下さい。
 **リスポンスを返すことからコミュニケーションが始まるのです。**リスポンスがないとコミュニケーションは始まらない。原理的には、これだけ押さえておいて下さい。
 だから、ここでは「読んだ、わかった」という意味で「いいね!」をしてください。「何ですか、これ?」というときは、そのようにコメントして下さい。そこからコミュニケーションが始まるはずです。あまり「責任ある言動」なるものに囚われる必要はありません。そのうち勉強していきますが、そのようなものが言われる組織から何か創造的なものは生まれません。創造の芽を摘むだけです。
 というわけで,お気軽に「いいね!」してください。まずはそこから始めましょう。
 「メゾメディア工房」のちに「表現プラットフォーム」をWorkplace by Facebookに設置したのは、LINEやTwitterよりじっくり時間を取りたいと考えたからです。容量も多いし、ずっと残ります。タイムラインは必要だと思いましたが(ケースマにはそれがない)もっと複線的でないと、じっさいのゼミ活動には対応できないし、1人ひとりの温度差や瞬発力の差もタイムラインに吸収できないだろうということです。
 だから、何日前の投稿であっても、**いま「読んだ、わかった」なら,その場でリスポンスを返せばいいんです。**そういう人がたくさんいれば、そこが現時点での「旬」なんです。Workplace by Facebookも、そうなるようにできているはずです。なぜなら、リスポンスがあった時点からコミュニケーションが始まるからです。

### D 学生のポートフォリオへの展開
 ゆくゆくは、こうして作品化したコンテンツをクラウド上で束ねることができればポートフォリオになります。教育現場における「表現プラットフォーム」の実践的目標はここにあります。この点については継続して研究していきたいと考えています。

「表現プラットフォーム」について関心のある方は、教員・学生・院生・職員を問わず、野村までお問い合わせ下さい。815研究室。
R707FF@kokugakuin.ac.jp

表現プラットフォームへの招待
著者 野村一夫
発行 2019年2月21日
本書は平成30年度経済学部共同研究プロジェクト(研究代表者・野村一夫)の成果物である。謹んで感謝したい。